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2005年03月07日

自由が丘にて

自由が丘のスタジオ。
ブースに入ってスタンバイ。
耳にはヘッドフォン。目の前にはマイク。
でも、レコーディングじゃないのだ。

いつまで待ってもヘッドフォンから曲は流れて来ない。
じゃ、ラジオか?っつーと、また違う。
決してフリートークを期待されてる訳でもない。

譜面台に乗っかってるのは、楽譜じゃなく台本。
どーやら「声で演技をしなさい」と要求されてるみたいだ。

演技?
そんなのした事ないぞ。

生まれついての正直者で、
隣近所から『金谷さんトコの正直ジイさん』と
呼ばれておるこのワシが、演技を?

老境にさしかかりし後、かような場面に遭遇するとは。
まこと人生とは分からぬものぢゃ。
さりとてワシも戦中・戦後を生き抜いた大和おのこ。
「素人ぢゃから!」などと逃げ出す道もなし。
そんな態度は専門職の方々に非礼なり。

覚悟を決めて挑みせば、耳当ての奥より、
「良い良い」との声。
ぬっ、ワシは誉められておるのか?
ぬほほほほほ。

何?次は泣きマネとな?
これで、どうぢゃ?
むふふふふ。

何やら楽しくなって来たぞ。

しかし、近頃の文明の進歩は恐るべしぢゃ。
画面の中ではまるで生きているような人物の動き。
『ゲイム』と呼ばれるものにワシの声を使うらしい。

帰り道、自由が丘の街を散策。
半世紀ぶりに歩く町並みはずいぶんと変わっておった。
しかし、演技というのは難しいモノぢゃな。
時折、演技をしていた時の気持ちが蘇って来て困る。
何でワシはこんな所歩きながら泣いおるんぢゃ。
もう、演技は終わっているんだから元に戻れ!

だいたいワシとか言ってるけど、
俺ジイさんじゃねーだろ!目を覚ませ、俺!

演技って恐ぇー。
素人が生半可に手ぇ出すモンじゃねーな。
プロの人たちってどーやって元に戻すんだろ?

著:Kanaya Hideyuki

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